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旧レビュー転載 Jeff Beck [ JEFF ]

だってベックだぜ
<旧 Web Site に掲載していたCDレビューからの転載です>


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[Jeff] / Jeff Beck
2003/8/6 Sony Music Entertainment Inc.

JEFF


今更だが、ロックの3大ギタリストと言うと、それはエリック・クラプトンとジミーペイジとベックを指した時代がある。

現実的にはクラプトンはごく普通のギター弾きである。別にこれといってギタリストであることの特殊性は無い。上手いギタリストと言うより、無難にこなれたギタリストだ。

ジミー・ペイジが下手糞なギター弾きであることはツエッペリン当時から公然の事実。ペイジはギタリストじゃあ無いんだ。それよりロック・ビジネスを手玉に取れる詐欺師としての才能を評価すべき。
そのジミー・ペイジがコンプレックスにも似た憧れを抱きつづけた対象がベックであったことも、周知の事実。

そしてベックはね、ベックは・・・。
うーむ、ベックを語るとき、そこに畏敬の念を禁じえない。
何をどう語って良いのか、はっきりとした言葉を持ち合わせていない自分が歯がゆくなる。
結局、言葉じゃ無理なんだ。ベックのギターを言葉で形容しようなんて行為自体が徒労なのだ。
私にとってばかりではなく、およそあの時代を経験したギター小僧にとって、ジェフ・ベックという存在はヒーローなのだ。


ジミ・ヘンドリクスがエレクトリック・ギターの可能性を(断片的に)開示した事は認めよう。
ジェフ・ベックはその上でエレクトリック・ギターの正しい弾き方を提示したのだ。
もとい、エレクトリック・ギターの楽器としてのアイデンティティを確立させたのは、誰が何と言おうとジェフ・ベックなのだ。
エレクトリック・ギターは楽器としての不完全さを最大限に増幅してしまった魔物だ。
その魔物をアコースティック・ギターの代用として無難に手なずけたり、大音量で吼えさせてイメージだけのアジテーションに使うことはできた。サウンドのインパクトだけでロック・ミュージックに命を吹き込むこともできた。
でも、エレクトリック・ギターのあるべき正しい姿については、唯一ジェフ・ベックだけが指し示すことが出来たのだ。


1975年にリリースされたアルバム「Blow By Blow」で、ジェフ・ベックは真のエレクトリック・ギタリストとなった。
当時、この名アルバムがギター・シーンに与えた衝撃は正に天変地異的であった。
実際にギターを弾いていた人間なら誰しもが、呆然と口を開け目は点となり、全員が白痴状態と化した。

「Blow By Blow」にはエレクトリック・ギターに対峙する全く新しいスタンスがあったのだ。
初めて魔物を楽器として手なずけ、その馬鹿みたいな可能性を一体になるまで吸収し、ツールとしての未熟さを逆手にとった、全く新しい、正しい弾き方を教えてくれた。これがエレクトリック・ギターだ、と。
だから、それなりにギターを弾けた人間ほどショックが増大したわけで、日本の某有名ギタリストは「ジェフ・ベックはやってはいけないことをやってしまった」とまで発言した。
そして、続く「Wired」では、そんな周囲の好奇に満ちたアナライズすらコナゴナに砕き飛ばした。


完璧にコントロールされたピックアップ・セレクトと微妙なピッキング・ニュアンス。
1弦最高音のチョーキングから一瞬にして6弦最低音のアームダウンに急降下するような、もはやフレーズを超越した音の固まりの爆発。
フィードバックすらも駆使した無限の音色。
彼は中国の胡弓のような幻想的な音色から、アラスカの氷河が大海に崩れ落ちる時の怒号のような地響きまでを1本のギターで弾き出す。
ボリュームやスイッチングといったメカニックすらも音楽の要素として駆使し、エフェクト・ワークも誰もが考えも付かなかった次元でエモーションに直結させた。

冒頭の命題を引き継げば、ジェフ・ベックは単にテクニック面だけで語れば吃驚するほど上手いギタリストでは無い。(もちろん、あの3人の中では1番上手いけどね)
でもね、ジェフ・ベックは特別なのだ。
彼の前では全てのギター小僧は正義の味方を信じる子供になってしまう。
もとい、ジェフベックの前では、全てのギタリストは「ギター小僧」になってしまうのだ。
結局、ジェフ・ベックはヒーローなんだ。

新作「Jeff」は、まあ、前作と同じ系統。
1999年に見事に復活を果たした「Who Else」、そしてグラミーを受賞した前作「You had It Coming」と続いたヒップホップやドラムンベースを基盤にしたデジタル・ロック・サウンドの上でギターを弾きまくるというスタイルだ。

正直言ってしまえば、今となっては、このスタイルに衝撃は無い。
巷では今回の「Jeff」への「Apollo 440」の参加がトピックスとして騒がれているが、それだって結果としては予定調和だ。
ラップトラックに近いワンコードのリズム中心のバックにしては上物のサウンドが整理されていなくて、アンビエントなミックスも輪をかけてゴチャゴチャと散漫に聞こえてしまう。
その中にベックのギターが埋もれてしまっているし、そもそもこのスタイル上でペンタトニック中心のロック・ギターであれば、バックとの緊張感は持続できないっしょ。

ベックならやれたでしょって?、たぶんね。
でもさあ、ベックにそんな「音楽性」とか「意味」とかを期待しちゃいかんよ。
だって正義の味方なんだもん、ベックは。
スペシウム光線(古い!)一発で、敵を倒せば良いんだよ。
成熟した戦術だとか、近代的な頭脳戦とかには見向きもせず、どんな境地であろうがますます力強いスペシウム光線一発のギターであるところが、この天才の凄さだもん。


たぶん今さら面倒なバンドなんかやるよりは好きな車をいじっていたほうが面白いんだろうな。
ギター弾くなら、プロジェクトにトラックを作らせて、その上で難しい事なんか何も考えずに好き勝手に弾いていたほうが楽なんだろうな。
だって、59歳だよ。
おおよそ我々が59歳の老人に何を期待し、何を背負わせれば良いのだ?
我々は彼が切り開いた道に立っているのだよ。


新作「Jeff」が面白いとかつまらないとか、そんなことはどうでもいいんだ。
だって、あのベックだぜ。四の五の言うなよ。
ジェフ・ベックがギターを弾いているんだぜ、それだけで何の文句があるんだよ。
来年還暦を迎えるジェフ・ベック大明神が、我等の為にギターを弾いて下さっているのだ。
その吠えるチョーキング1音の前でひれ伏しなさい。

This text was written by M.Yamaguchi. 2003/Aug.

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それでは、最近の Jeff Beck の動画を貼っておきます。

Crossroads Eric Clapton Guitar Festival 2007 でのライブ。
ドラムはなんと Vinnie Colaiuta が叩いている。
そしてベースは話題の Tal Wilkenfeld
若干21歳、ベース歴4年というキャリアながら、その音楽性と驚異のテクニックでベース界では話題騒然。
1stアルバムでは、なかなかのシリアス・ミュージックを聞かせる逸材で、最近では当方もミーハー的なファンになりつつある。
この動画でも、ノーブラのTシャツの胸に視線が釘付けになっているわけでは無い。

曲はBlow by Blow での伝説の名演で有名な "Cause We've Ended As Lovers" 。
最高です。



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