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Joe Zawinul 逝く

Joe Zawuinul 逝く

また巨星が落ちた。
2007年9月11日、Joe Zawinul が逝ったのである。

もちろん語るべき事は沢山あるような気がするが、とりあえず過去に書いたレビューを若干修正して以下に転載しておこう。

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[World Tour] / The Zawinul Syndicate
1998/4/28, Victor Entertainment

World Tour


Zawinul の音楽性については、別にそれほど思い入れはない。
今となっては後期 Weather Report が Zawinul の個人バンドだったことは明白である。
どちらかというと単純なトライアド風な和音をハイブリッドに連結した進行と、ペンタトニックを基調にしたシンプルなメロ。
その上で摩訶不思議な音色による怒濤のソロが展開する。
民族音楽的な楽園指向とシリアスなジャズの融合を、ダイナミックなリズムの上で展開する。
しかも、全てが超絶技巧と深い知識に裏付けされた高度な演奏という、あの世界だ。
Weather Report の即興に見られるエモーショナルな部分は、私は好きであるし、やはり独特の世界があると思わざるを得ない。
Jaco Pastorius という、その出現だけで音楽の歴史を変えてしまった( Pat Metheny の言葉)ベーシストの存在は別にして、確かに、後期の Weather Report に音楽シーンを牽引できる力があったかと言うと疑問だが、それにしても良質な音楽であったことは事実。


コンテンポラリー・ミュージック・シーンの潮流の中で、常に Zawinul の存在は異端であった。
驚くべき事に、Weather Report という伝説のグループを牽引していた時期ですら、その存在は異端であったのだ。
しかしながら、その類い稀な作曲能力と、驚異的な技巧、更には斬新な帆さばきで、Joe Zawinul は常にメインストリームへ絶大な影響を与え続けた。


Zawinul は何処へ行こうとしていたのだろうか?
その答えが、このアルバムにあるような気がしてならない。

The Zawinul Syndicate
1998/4/28, Victor Entertainment

Produced by Joe Zawinul
Joe Zawinul(key)
Victor Bailey(b)
Gary Poulson(gt)
Manolo Badrena(per),
Paco Sery(ds)
Richard Bona(b)
Frank Hiffman(spoken words)
Papa Abdou Seck(vo)


とにかく、見事にグルーブするリズムに身を任せていただきたい。

Victor Bailey については、もう Zawinul の秘蔵子としては有名すぎるが、後期ウエザーで Omar Hakim と作り上げた独特のリズム・セクションは、それだけで芸術の域に到達していたと思う。
ドラムは、Paco Sery 。彼もワン・アンド・オンリーのドラマーだ。
ベイリーとPaco Sery のコンビネーションは、タイトでありながら、柔軟で、非常にグルービーかつパワフルなリズムを出す。これは凄い。


そして、全18曲(2枚組です)のうち6曲では、Richard Bona がベースを弾いている。
そもそもボナは Paco Sery の紹介でメジャー・シーンに出現したのであるが、このアルバムで聞けるボナとPaco Sery の世界は、まさにミラクル。
あの Marcus Miller にして「凄い速弾き」と言わしめた超絶テクニックは、このアルバムの「Bona Fortuna」でも聴ける。
とにかく上手い。
単に指が早く動くというだけではなく、ジャコとはあきらかに異なるが、それと同等のオリジナリティー溢れるボナだけのノリがある。これは凄いこと。
Victor Bailey が名実共にジャコの後継者だとしたら、ボナはジャコとは別の次元で語れる希有なベーシストだろう。


ところで、Zawinul の楽園指向の本質については、私としては未だに明確な結論までには達して無いのだが、そこに「リズム回帰」というコンセプトを含む事は容易に推察できるし、要は土着のリズムに感じる人間の原始的な歓喜というファクターは重要だろう。
民族音楽の根源は讃歌だ。それは宗教的な次元では無く、もっと生活に密着した中で神を感じること、神を見ることの喜びなのだ。
それを定常的に再現できるリズム隊という観点から考えると、ザビヌル・ミュージックの変遷は理解しやすい。
そこに Wayne Shorter との確執が生まれたのかどうかは定かでは無いが、Weather Report でまさかのCarlos Santana をフュチャーするという暴挙についても説明が付く。
私としては、ショーターは、やはりメロディの魔術に魅せられた天才だと思うわけで。
とにかく、Zawinul が目指すミュージック・マジックには、奇跡のリズム隊が必要であることは、たぶん間違い無い。


もちろん、そこには無条件のエモーションも必要だ。
そして、それは音楽の現場ではライブというシチュエーションで容易になることも事実。
そういう意味で、このアルバムはザビヌル・ミュージックにとっては、かなり理想的な状況下にある。
陳腐なコンセプトと言ってしまえなくはないが、でもね、その奇跡を起すだけのリズムがグルーブできるとしたら、私は認める。
私もひとりのミュージシャンとして、認めざるを得ない。


このアルバムにザビヌルの楽園は見えるであろうか?
目蓋を閉じて聴いてみて下さいませ。


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最後に Zawinul Syndicate の動画を貼っておく。
曲は Carnavalito。
1997年の North Sea Jazz Festival でのライブ。
ドラムはもちろん Paco Seary だ。

Manolo Badrena と Paco Seary のバトルも聞き物。
ベースは Richard Bona です。



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