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ルーツ的なもの その5 [ Lee Ritenour ]

ルーツ的なもの その5

ギタリスト的なルーツとしては Lee Ritenour に間違いない。


松原正樹に受けた影響が自分の根底にあることは認める。
ジェフ・ベックの「Blow By Blow」に受けたショックも忘れられない。
しかし、ギターを弾く事を生業にしようかと真剣に考えたきっかけは、リー・リトナーの2ndアルバム「Captain Fingers」なのだ。

Captain Fingers


今のリトナーは「円熟」という言葉が相応しい成長を遂げている。
溌剌としたカーリー・ヘアーの若者の髪も寂しくなった。
でも、未だにリトナーはリトナーであり、常に新しく変わり続けている。
そこが、Lee Ritenour というギタリストにシンパシーを感じる部分なのである。


かなり昔に書いたレビューを載せてみる。
この文章の中に、私が考えるリトナー像が端的に表現されている。

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[Rit House] / Lee Ritenour
2002/8/27, Verve

Rit House


「Stolen Moments」や「Wes Bound」の延長線上にあるジャジイな内容で、リトナー流のジャズギターを堪能できる。

リトナーの場合、「Captain Fingers」や「Gentle Thoughts」時代の、ある意味フュージョンシーンを代表した明快でスリリングなプレイは、年齢とともにやがて落ち着いた艶のあるスタイルに変化してきた。
そしてその変化は、決して意外な変化ではなく、ごく自然で必然的な変化として誰しもが受け入れることのできた変化である。


常にリトナーと比較して語られるラリー・カールトンの最新作「Deep Into It」は、近年に無くラリー・カールトンらしいアルバムであった。
ほとんどの人がカールトンに対して抱くイメージそのままでありながら、それがみごとに洗練された内容であった。
そこには確かにカールトンのルーツが感じられた。

方やこの「RIT HOUSE」も、非常にリトナーらしいアルバムである。
誰しもがリトナーに抱くイメージそのものであるが、しかし、そこにリトナーのルーツは感じられない。

というか、ここがラリー・カールトンとリー・リトナーの決定的な違いだと思うのだが、リトナーには固執するルーツなど存在しないのだ。
変化を良しとし、それを常に自分のスタイルとして昇華できる類まれなギタリストが、リー・リトナーなのである。


リトナーに対しては、ファーストアルバム「First Course」の時代から、そのプレイの間口の広さに対して、軟弱であるとか、器用貧乏だとかの批判があった。
しかし、そのスタイルを維持するということは、実はものすごい努力が必要なことなのである。
リトナーは、ワワー・ワトソンにもなれるし、ベンソンにもなれた。もちろんラリー・カールトン的なギターも弾けるし、ジョー・パス、そしてパット・マルティーノみたいに弾くこともできたのだ。
そして、そういうフレキシブルなプレイを自分のスタイルとして確立してしまったという事実だけで、私はリトナーを認めざるを得ない。
誰がなんと言おうと、ギタリストとして、これは凄いことなのだ。
そして、それこそがリトナーの本質であり、リトナーをリトナーたらしめているアイデンティティなのである。

だから、リトナーにルーツなど存在しない。
この「RIT HOUSE」は、まさしく今のリー・リトナーとして正しい姿であり、過去のリトナーと比較しても何の意味も無いのだ。
リトナーは時代とともに変化し、その時代との関係を注視すべきギタリストなのだと思う。


さて、このアルバムは、非常に良くできている。
グルーブもあり、ソロも聞きどころ満載だし、曲も良い。
ソロ前々作からのベクトルに、曲によっては最新のサンプリング・テクノロジーをスパイスとして効かせたり、更にこの2年のブランク中に手がけたブラジルサウンドやレゲエサウンド等の幅広い音楽性が見事に溶け込んでいる。

ギターの音色も見事。色っぽいシュチエーションでも十分に使えるアルバムだ。
この手のサウンドにはどうかと思ったビニー・カリウタもレイドバックした鯔背なスネアワークを聞かせてくれるし、マーカスもいぶし銀の存在感である。

加えて、どの曲もキーボードが良い。
なかなかのソロだなとクレジットを見たら、不覚にもジョージ・デュークのローズだったり、ずいぶんそれっぽいオルガンじゃないのと思ったら、なんとジョイ・デフランシスコのハモンドB3だったりする。
中でもアラン・パスクアのアコピは出色だった。


もちろん、音楽のカテゴライズは無意味かもしれないが、リトナー自身がライナーノーツで主張しているところの「スムースジャズ」批判に、皮肉なことに、私としては、このアルバム自身が反論してしまっていると感じられる。
実際、巷のスムースジャズに内容の無いBGMが多いというのも事実なのだろうが、そんな中でこのアルバムこそが、本物のスムースジャズなのだと主張すべきではないか。
とても良いアルバムです。

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最後に、最近のリトナーの動画を貼っておこう。 レコーディング企画でのスタジオ・ライブで、懐かしのメンツが大集合というところだ。
今更ながらハービー・メイソンの職人技には痺れるが、なんと言ってもあのキュートだったパトリース・ラッシェンが見事な「おばさん」に変貌している事実には、大いなる時の流れを感じる。





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