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Pat Martino [Live at Yoshi's] 孤高のギタリストの精神的解放

Pat Martino [ Live at Yoshi's ]
2001年リリース
Blue Note Records

Pat Martino : Guitar , Joey Defrancesco : Organ , Billy Hart : Drums


Live at Yoshi's


パット・マルティーノ
まあ、Jazz Guitar を好む人であれば、どこかで体験しなければならない衝撃。
印象としては、できれば避けて通りたいほど重く深い。
そもそも、ギター界に旋風を巻き起こした当時から「変人」的な立ち位置。
分別をわきまえた紳士に至った現在でも、気難しい頑固オヤジといった風貌。
過去には宗教的な精神世界も見え隠れし、Jazz Guitar界の重鎮でありながらも、決して一般受けするギタリストでは無い。

Pat Martino


しかし、およそギター弾きであれば、あのマシンガンのような怒涛の16分音符にはノックアウトされる。
「こいつ16分音符しか弾けないんじゃねえの?」と疑うような、どこを取っても超絶16分音符のソロ。
しかも正確無比、かつフレーズの淀みが無い。
この尋常では無い技巧だけで、無視する事は不可能。


だいたい、この人の経歴が笑えるほど凄い。

30歳前半にして完成の域に至ったシーツ・オブ・サウンドで、「ギターのコルトレーン」と呼ばれるほど高い評価を受けたが1980年に脳動脈瘤に倒れ姿を消す。
手術は奇跡的に成功するものの父の名前以外のすべての記憶を失い、自分がギタリストであることも忘れていたという。
ミュージシャンとしては致命的な、身体の麻痺と痺れも残る。
誰もがもう2度とカムバックすることは不可能と考えた。
72年発表の「LIVE!」に収録された"Sunny"での鬼気迫るソロをギター界に残し、彼の名前は伝説として過去のものになった。
長いリハビリ生活は過酷で、妻は去り、電気ショックによる治療は苦痛を伴った。
しかし、彼は養わなくてはならない両親のため、自分の過去のプレイを聴き返して、再びギターを勉強していった。
そして、87年にアルバム「THE RETURN」で不死鳥のように蘇る!

おいおいおい、っていう感じ。
で、その鍛錬の過程で、有名な「Minor Conversion」なるインプロビゼイションの理論体系まで構築してしまう。
壮絶な人生に対峙する驚異の精神力と、想像を絶する努力。
太い弦・固いピック・高い志。
実はこのストイックさこそが、Pat Martino の「とっつきにくい」ところだろう。
確かに素晴らしい人なんだろうけど、付き合うには息が詰まる感じ。

余談だが「Minor Conversion」とは「あらゆるコードはmin7のフォームに置き換えれる」という、ギターの指板に特化した強引な理屈。
アッパー・ストラクチュアまで展開したテンション・ノートを利用するが、実はマルティーノ自身の「経験則」による部分も多く、細部では理論的な矛盾もある。
しかしながら、そこから縦横無尽に叩きだされるマイナースケールの波状攻撃は、局所の矛盾を簡単に凌駕するほど快感だ。
これ、ちょっと覚えると、「なんちゃってマルティーノ」なソロにはけっこう使えます。

さて、「Live At Yoshi's」は、Pat Martino のアルバムの中では、そんな「とっつきにくさ」が感じられない。
しかも、演奏は素晴らしく、音楽もグルーブしている。
素晴らしいライブ・アルバムに仕上がっている。
個人的には彼の最高傑作と言っても過言ではない。
勿論、怒涛の16分音符も炸裂している。
加えて、Joey Defrancesco の Hammond B-3 が最高のグルーブをプッシュする。
私も大好きなデブです。
Martino のうねる様なソロもストイックな印象ではなく、ファンキーでグルービーな熱さすら感じる。
曲も往年の名演を彷彿させる選曲で、マニアを泣かせる。
正直、私も鳥肌立ちましたわ。

今までなんとなく気になりながらも、あと一歩 Pat Martino に踏み込めずにいた貴兄、このアルバムなら大丈夫です。
マイナー・コンバージョンから叩き出される無機質な印象のラインも、前へ前へとドライブする力強さで、ジェットコースターのような疾走感を感じられるし、スリルと爽快感が味わえます。
素晴らしいアルバムです。



しかしだ、ちょっとギタリスト的トリビアをたれると、昔から Pat Martino の弦の太さは異常。
ベースじゃないんだから、というほどの太さらしい。
そして、ピックに至っては大理石のピックを使っていたという伝説すらある。

まあ、復帰後は、後遺症で右手の感覚を失って、どうしても強く弾きすぎて普通の弦だと切れてしまうというインタビューを読んだことがある。
ピックも厚くて硬いものでないと、「弦をヒット」するという感覚を感じられないのだろう。
一説によると現在は16-18-26-36-48-58というゲージらしい。
例えれば09からのゲージの3弦程度の太さを1弦に張っていることになる。
普通の人間にはとても弾きこなせないはず。
そもそも、こんなゲージを張られたら普通のギターならネックがもたない。
Gibson Pat Martino Signature Model は、この強力なテンションに耐えるネック構造を持っている唯一のギターだろう。



Gibson Pat Martino



ということで、けっこう最近の Pat Martino の動画でも。
2002年「Umbria Jazz Winter #9」のステージで、「Live at Yoshi's」 と同じオルガン・トリオというフォーマット。
B-3 はもちろん Joey Defrancesco 、ドラムは Byron Landham。
曲は「Oleo」。
ギター・アンプが Roland JC-120 というのも、いろいろな意味で興味深い。





最後は、ジョンスコとの共演で「Sunny」。

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コメント

ご指摘ありがとうございます。
仰る通り、正しくは8分音符でしたね。
深く考えず、テンポ的に16分音符と表現してしまいました。(^-^;

久しぶりに、古い記事を見てみたら、動画のリンクが切れていますね。
ニフティの動画配信って、いつのまにか終わっていたようです。
見苦しくて済みませんでした。

16分ではなく8分ですよ

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