« Uprise Concert - Ssanai Movie | トップページ | ギターを弾く貴公子 Andreas Oberg [My Fevarite Guitars] »

Superior Drummer 2.0 を使ってみて

Toontrack Superior Drummer 2.0

ドラム・トラックの作成には長い間 Native Instruments 社Battery を愛用してきたが、数年前からお手軽な生ドラム音源として Toontrack 社 の EZ Drummer を使い始めたことは、かなり前のエントリーで記載した。
作曲・編曲のスケッチ段階においては、空気感まで含めたリアルなドラム音源が手軽に使えるので重宝する。
この「手軽さ」という意義は大きく、DAW を立ち上げる時の精神的なストレスが軽減される効果は想像以上に大きい。
高品位なサウンドによって、創造に対するモチベーションが高まることも事実。
拡張性という観点でも、目的に合わせた別売りキットを追加できる仕様は、作ろうとする楽曲の方向性に対して音源選びの迷いが無い。
実際、1本1万円程度という EZXシリーズなんて、けっこう衝動的に買ってしまうしね。

EZX


しかしながら、最終的な作品として、真面目にドラム・トラックを作りこもうと考えると、当然ながら EZ Drummer 付属の簡易ミキサーでは荷が重く、パーツ毎に DAW 上へ個別パラ出しした上で、EQ調整・アンビエンス調整・コンプ処理・リバーブ処理等が必要だった。
このあたりの事も、以前のエントリーで書いた。

でだ、問題は、使っているうちに、だんだんこの補正作業が面倒になってくるということ。
集中力を維持できない自分の性格も要因だろうが、楽曲の仕上げ段階においても「ま、トータルコンプだけででいいか」って感じで、妥協が始まる。
人間というものは、楽な方に動く。
言い訳かもしれないが、文明とはそうやって形成されてきたという歴史もあるはず。


世の中にドラム音源は様々な種類があるが、生ドラムのシミュレーションに特化した製品としては、Fxpansion 社 の「BFD」と、XLN Audio 社の「Addictive Drums」がプロ御用達として有名。
もちろん、これらの製品と EZ Drummer では、前提とする土俵が違うわけで、同じ目線では比較の対象にはならない。
EZ Drummer は、あくまでも簡易的な廉価版という立ち位置であり、強引に同じ土俵に上げるための付加作業にフラストレーションが溜まってきたのも事実。


で、Tonntrack社 としても業務用のドラム音源は存在する。
そもそも Toontrack 社は、この分野の先駆者として「dfh Superior」という革新的な製品を持っていた。
前述の「BFD」「Addictive Drums」と併せて、事実上の御三家として業界に君臨していたわけだ。
マイクのリーケージやサンプル・レイヤーのランダム再生等という画期的なコンセプトを基に、この分野での元祖的な存在であった事も周知の事実。

しかしながら「元祖」とか「本家」とかの共通の運命として、その洗練さは後発が具現化してしまう。
「dfh Superior」も、あまりにも膨大な機能を盛り込んだ為、使い勝手的には整理が不十分であり、動作も重いという致命的な欠点があった。
それを「BFD」や「Addictive Drums」が使い勝手良くモディファイしたことによって、Toontrack 社としては後発にずいぶん水を開けられてしまった感は否めない状況であった。


この状況を打開したのが、昨年上期にリリースされた「Superior Drummer 2」(以下 SD2 )であった。
少しの間は様子をうかがったが、結局のところ、当方もこの SD2 を導入している。
スペックだけを見れば「BFD」という選択肢もあった。
機能的な自由度やデフォルト・ライブラリーの充実度から考えても、BFD の最新バージョン「BFD 2」に軍配が上がることは確か。
デリケートなエンジニアリングまで含んだバーチャル・ドラム環境の最高峰は、現時点では「BFD 2」であることは間違いない。
ただ、当方の個人的事情として、手持ちの EZ Drummer や、拡張キットの EZX という資産を生かせるという打算的側面で、SD2 以外の選択は不可能だった。

Superior Drummer 2.0 Package


で、すでに「Superior Drummer 2」を使用して数か月が経過したので、実際に使用して感じた内容をまとめてみたい。
ドラム音源に悩む諸兄にとって、多少なりとも参考になれば幸いである。




先ず、SD2 のシステムに対する負荷は、思ったほど重くない。
要求される最低マシン・スペックは Macintosh の場合で、G5もしくはIntel製マルチコアCPU、OS は MacOS X 10.4(10.5対応)、RAM メモリは 2GB以上を推奨と、現時点の DAW 環境としては平均的なもの。
当方、Macintosh PowerPC G5 2Ghz Dual 、RAMは4Gという旧式な環境だが、DAW へステレオ・アウトで出力している限りは、それほどストレス無く使える。
まあ、個別であろうとステレオであろうと最終的にはオーディオ・データとして録音してしまうので、アレンジ完成までの作業中の負荷が過大でなければ問題にはならない。


予め収録されているドラムは、NYの AVATAR STUDIO(旧 Power Station!) にて収録された高品位なサウンド。
癖のない素直なドラム・サウンドが特徴で、広いジャンルで違和感無く利用できる。

当然ながら、通常のアレンジに必要な基本的なドラム・パーツは、ほとんど網羅されてる
バリエーション的には必要最低限のパーツという印象を受けるが、追加音源として Vol.2 のリリースも予定されているし、何より今までの EZX シリーズのキットやパーツを読み込めるので、それほど不自由はしない。
Power Station の誇る夢のような録音機器を駆使して収録されたサウンドは、ともすればまとまりすぎているという印象すら受けるが、逆に「どのパーツもそのままトラックで使える」という部分では非常に使い勝手が良い。


楽曲の雰囲気にあわせたサウンド・イメージの変更であれば、内蔵のエフェクトが効果を発揮する。
SD2 の売りの1つでもある、英国 Sonalksis 社 が開発した専用エフェクトは、期待を裏切らない素晴らしい出来。
この内蔵エフェクトを上手く使えば、MIX 時にも DAW 上でのエフェクト処理を最低限に抑えられる。
EQ・filter・Gate・Compressor・Transient という5種類のエフェクトを使えば、ドラムに必要な大概の音加工はできてしまう。
しかも、専用エフェクトだけあって、どれもドラムに特化した設定とパラメーターになっているので、直感的に美味しいところに効く。
スネアを派手にしたかったりハイハットを軽くしてキックを重くしたかったりという、アレンジ段階で楽器を重ねていく作業中の突発的なニーズにも戸惑いは無い。
プロのエンジニアの間でも定評ある Sonalksis 社のエフェクトが内蔵されているという点だけとっても、SD2 のコスト・パフォーマンスは高いと言えよう。


前述したように SD2 は EZ Drummer 向けの追加音源を読み込むことができる。
SD2 としてはこの部分で拡張性を維持しているわけで、同一メーカーの「業務用と廉価版」という住み分けから考えても妥当な仕様だ。
ただこの機能については、けっこう使い勝手の悪さを感じる。
それは、追加音源のロードに関してはキット単位での置き換えが基本であり、単品パーツの読み込み手順が煩雑だということ。
もちろん、既に読み込まれているキットに追加して、EZX シリーズ等の別のキットから単品パーツを読み込むことはできる。
SD2 では「X-Drum」と呼ぶ単独の機能だ。
しかし、それはあくまでも「追加」というイメージであって、ドラム・セットそのものを組み替えるという直観性は無い。

例えば SD2 の標準キットを基にして、スネアだけは任意の EZX のキットに含まれるものを使おうとした場合、標準キットを組み替えるのではなく、スネアだけを追加するという概念になる。
つまり、EZX のスネアをロードした段階でドラム・セットにはスネアが2つ存在することになり、実用上は標準キットのスネアのメモリを解放したり、MIDIチャンネルを変更したりする手間が必要になってしまう。
これは、些細なことではあるが現場的にはけっこう面倒。
できうることなら、標準キットのスネアを選択するプルダウン・メニューの中に、EZX シリーズ等のPCにインストールされている全てのキットに含まれるスネアが現れてほしいという気がする。


しかしながら、ドラム・セットを組んだり、パーツのパラメータを調整する為の「コンストラクション・ウインドウ」の使い勝手は悪く無い。
グラフィック的には、ちょっと野暮ったい気もするが、まあ、許せる範疇。

Superior Drummer Construction Window



さて、EZ Drummer で、当方が不満に感じていた事のひとつに、シンバルに個別のマイクがアサインされていないという部分。
全てのシンバルはオーバーヘッド・マイクで処理される。
まあ、実際のドラム・レコーディングを忠実に再現した仕様なのは分かるが、EZ Drummer の簡易的なミキサーでは、リーケージ(マイク間の音のカブリ)のレベルによるアンビエンスのコントロールとシンバルの音量調整が1つのフェーダーに統合されてしまう不自由さは否めない。
オーバーヘッド・マイクの音量を下げてドライなドラム・サウンドを作ろうとした場合、シンバルの音量も下がってしまうわけ。
EZ Drummer の場合、オーバヘッド・マイクはドラム・セット全体をカバーしてしまう。
よって、このオーバーヘッド・マイクのレベル設定はドラム全体の音作りにおいて非常に重要な意味を持つ。
その要素とシンバルの音量調整を1つのフェーダーで両立させることは困難だったわけ。
こんな理由もあって、EZ Drummer を楽曲の仕上げで使う場合は、全てのパーツを個別に鳴らしてパラで DAW に録音し、加えて其々のアンビエンス成分も別のトラックに録音した上で、DAW上で音作りする必要があった。


SD2 についても、初期設定ではシンバルはオーバーヘッド・マイクで処理される。
しかしながら、さすがに SD2 は、個別にマイクを立てることができる。
ただ、SD2 の場合は、わざわざマイクを追加しなくとも、内蔵ミキサーのフェーダー以前に単品パーツの音量を変更できるパラメータがあるので、オーバーヘッド・マイクのフェーダー操作によってシンバルの音量に不具合が生じる事は無い。
これ、かなり嬉しい。

それに、そもそも SD2 の場合、全てのマイクのリーケージ設定については、完璧な自由度が与えられている。
これが EZ Drummer とは決定的に異なる部分。
現実の世界では物理的に不可能な設定も含めて、実際のスタジオでのレコーディング・エンジニア以上の操作ができてしまう。
例えば、オーバーヘッド・マイクであれば、シンバルの他に、どのパーツをどのくらいのレベルでひろうかを自由に設定できる。(まあ、この機能は SD2 の優位性を示すものでは無く、昨今の生ドラム・シミュレーション音源の、最大の特徴でもあるが。)
スネア・トップのマイクにはキックをカブらせないとか、スネア・ボトムのマイクがひろうロー・タムによる響き線の共振をカットするとか、ルーム・マイクでハイハットのレベルだけ下げるとか、もう自由自在。
アンビエンスを含めたドラム・セットの基本的な音作りは、このマイク設定だけで十分にできてしまうほど。
このリーケージのパラメータは、ミキサーのチャンネル・ストリップ上のトグル・スイッチで現れるパネルとしてデザインされていて、非常に操作しやすく直感的だ。


内蔵ミキサー全体の使い勝手も悪くない。
しかしながら、バスの見せ方は、もう一工夫あっても良かったかも。
必要無いバスが、ミキサーにずらっと並んでしまう仕様は、スマートでは無い。
ただ、バス自体には不満は無く、スネアのトップ・マイクとボトム・マイクをまとめてコンプレッション処理するとか、アンビエンス成分のマイクだけひとつのバスにまとめてエフェクト処理するとか、様々な使い方ができる。
まあ、当方の美的感覚からは納得できないが、見た目の分かりやすさを考えてこのようなデザインを選択したという事かもしれない。
最大16バス、16アウトプットの自由なルーティングは、少なくともボトルネックになることはあり得ない。

Superior Drummer Mixer Window



色々書いたが、そろそろ個人的結論。


「Superior Drummer 2」は、私にとっては、「EZ Drummer」より手軽に使えるドラム音源となった。
冒頭でも書いたように、この「手軽さ」の意義は絶大である。


製品として「手軽さ・簡単さ・直観性」を方向性に持つのは EZ Drummer ではあるが、実際に業務で使うレベルの用途を前提とした場合は逆に煩雑さが増す。
その点、初めから業務用の使い勝手が練られている Superior Drummer 2 ならば、音楽制作のどの場面でもストレスを感じる事が無い。
様々なパラメータも上手く整理されていて、操作系もシンプルだ。
何事も面倒くさがり屋の私としては、もはや EZ Drummer には戻れない。

当然ながら、その手軽さは、実際のドラムのレコーディングやコンプやEQのセオリー、それにバスの概念や DAW の仕組みに精通していることが前提。
なんせ謳い文句のように「現実すら超える自由度」を持つ音作りができてしまうので、基本的なエンジアリング技法についてある程度の知識がないと、簡単に破綻する可能性が高い。
その部分に不安があるならば、迷わず EZ Drummer を選択すべきだとも言っておこう。

定価で42,000円前後、EZ Drummer からのクロスグレードで3万円弱という価格は、私にとっては十分に元が取れた投資であった。
当分は、SD2 を使いつつ、適当に EZX を買い足していくというスタイルで落ち着きそうである。


つい最近も、SD2 が怒涛のグルーブ・マシンと化す「EZX FUNK MASTERS」と、リアルなブラシ・サウンドまで収録した「EZX JAZZ」という魅力的な追加音源がリリースされている。
輸入代理店が定期的に実施する見事なキャンペーン戦略に抗う事ができず、即断で購入してしまったのは言うまでもない。


それでは、最後に 2008年の NAMM Show にて Superior Drummer 2.0 が初めて公開発表された時の Toontrack 社のデモ動画を貼っておく。
Nir Z による E-Drum の演奏で Superior Drummer 2.0 をリアル・タイムにトリガーしているが、シンバルを含めて、ソフトウエアから出ているドラム・サウンドとは思えないリアルさが分かるだろう。
間違えないでほしい、Nir Z の叩いているドラム・セットは単なる MIDI の入力装置であって、ドラムの音は出ていない。
全ては MIDI でトリガーされた Superior Drummer 2 が出力しているサウンドである。
打点位置での音色の変化やベロシティの強弱に反応して音色が変化する様は、もはやそこで本当のドラムが鳴っていると錯覚するはずだ。

演奏中に ルーム・マイクのレベルを調整しリバーブ成分を変化させたり、極端なエフェクト設定を試したり、スネアを変えてみたりと、かなりキャッチーなデモではある。
最近では Toontrack 社専属ドラマーのようになっている Nir Z だが、流石に上手いわ。


« Uprise Concert - Ssanai Movie | トップページ | ギターを弾く貴公子 Andreas Oberg [My Fevarite Guitars] »

Equipments」カテゴリの記事

Movie」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/521702/44115440

この記事へのトラックバック一覧です: Superior Drummer 2.0 を使ってみて:

« Uprise Concert - Ssanai Movie | トップページ | ギターを弾く貴公子 Andreas Oberg [My Fevarite Guitars] »