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けっこう燃えるライブ・アルバムを2品

遅ればせながら、最近になって面白がって聞いているライブ・アルバムがある。

John McLaughlin & Chick Corea の2008年秋に行われたヨーロッパ・ツアーを収録した「Five Peace Band Live」と、Jack DeJohnette を中心としたセッション・グループ Trio Beyond による2006年リリースのセッション・ライブ「Saudades」だ。
どちらもCD2枚組の気合の入った作品。
で、この2つのアルバムに共通して漂う、青白く燃え上がる情念と絶妙なシリアス加減がけっこう良い。
どちらもリリース当初に購入してはいたのだが、最近になって愛聴している。

Five Peace Band Live

Saudades


先ずは「Five Peace Band Live」。
まあ、ギタリストであるからには John McLaughlin に興味はある。

自分的には、マイルスの「In A Silent Way」の衝撃をリアルタイムで体験したわけではないが、その後の Mahavishnu Orchestra の時代からのマクラフリンの活動は十分に興味の対象ではあった。
中学生時代に初めて買った所謂「JazzRock」のレコードも、たしか Mahavishnu Orchestra のライブ盤だったような記憶がある。


John McLaughlin というギタリスト、自分的には嫌いではない。
Mahavishnu Orchestra から例の Shakti に至る系譜、世界的にブレイクした Super Guitar Trio、そして記憶に新しいところではデニチェンのドラムが炸裂した「The Heart Of Things Band」。
Jeff Beck も参加した「The Promise」は良かったし、シャクティのコンセプトをモダンに昇華した「Que Alegria」での Trilok Gurtu と Dominique Di Piazza とのインタープレイも素晴らしかった。
ほとんど全部、きちんと聞いています。
ただ、個人的にマクラフリンのギターには微妙な違和感を感じてきたことも事実。
音楽の質とは何ら関係無い部分かもしれないが、この人のギターの独特のクセというか、尖り方というか、フレージングの無機質感が微妙に肌に合わない。
ギターという楽器の特性を、ギタリスト的に主張しない。
それはそれで凄い事なのだが、ギタリストの視点でマクラフリンのギターを聞くと、どうもこの部分が気になるのだ。
一言で言えば、マクラフリンの弾くギターは「ギターらしくない」ということに落ち着くのだが、かなり語弊がある表現なので個人的感覚とは言え独り歩きさせるには無理がある。

で、このマクラフリンの特性が、けっこうプラスに作用しちゃったのが、この「Five Peace Band Live」だと言える。
Chick Corea と John McLaughlin という個性が明確な2人が揃ったら、さぞや「あんな感じ」になるんだろうなあと予想できる部分があって、正直あんまり期待したアルバムでは無かった。
だけど、このライブ、けっこう良い。
この2人の個性が同化して深みを目指してしまったら、正直聞く方としては辛いものがあるはず。
それを、上手く拡散させたところが、このバンドの成功要因。
ライブの構成はマクラフリンの近作と RTF 時代のコリアの作品を交互にプレイするスタイル。
この2大巨頭が、あくまでも相手のフィールドでの客演として、夫々が自己主張をしながらも絶妙な立ち位置で「引く」。
相手の曲では、あくまでも客演として上手く相手を立てるスタンスは好感度が高い。
で、そのスタンスでの Chick Corea のサポートが、マクラフリンのギターらしからぬギターの美味しいところだけを表面化させているのだ。
一聴しただけでわかるコリアの独特のハーモニー・カウンターによって、無機質なマクラフリンのラインが様々な色合いに変化する。
あのマクラフリン固有の緊張感を、なにげに洗練させてしまうコリアのセンスに脱帽する。


ただ、ともすればコリアもマクラフリンも主張が曖昧なまま、纏まりのない印象を残しかねないセッションに、きちんと音楽としての統一性を醸し出せたのは、2大巨頭をサポートするメンバーの力量だろう。
Christian McBride(b)、Kenny Garrett(sax)、Vinnie Colaiuta(d)。
ま、これだけのメンツなら当然か。
全員がリーダー格の実力を持つミュージシャン達。
要するに、だから Five Peace Band なんだろうが。
マクブライトは珍しくエレベを弾いているが、これが想定外に良いし、なんと言ってもヴィニー・カリウタのドラム。
最近のカリウタは八面六臂の活躍だが、このライブでも素晴らしいドラミングを聞かせる。
カリウタの躍動感が、このコリアとマクラフリンのマイルス・バンド以来の40年ぶりのセッションを懐古趣味に終わらせず、リアルタイムな時代感の中で展開できた勝因だろう。

カリウタと言えば、ついに買ってしまった Jeff Beck の DVD も良かった。
クラプトンのゲスト参加は微妙だったけど、ベックも「良い人」になったんだなあと時の流れを感じる映像だったわ。
ベックのギターには泣けたよ。


Performing This Week: Live At Ronnie Scott's




話しを戻そう。
Joe Zawinul による名曲「イン・ア・サイレント・ウエイ」から「イッツ・アバウト・ザット・タイム」のメドレーは、そのマイルスを軸とした歴史的重みを理解していると、より凄みを感じる。
ここで ハービー・ハンコックがピアノでゲスト参加するなんざ、計算しつくされたプロモーション戦略とは分かっていても、単純に鳥肌ものだ。
この「Five Peace Band Live」、変に緊張感だけでゴリ押ししないで、けっこう楽しんで聴けます。
マクラフリンのギターも適度にラフで、エモーショナルなところが良いっす。


次に Jack DeJohnette, John Scofield, Larry Goldings による2004年のロンドンでのライブ「Saudades」。
2006年の ECM 作品です。
この Trio Beyond なるオルガン・トリオ、けっこう凄いわけよ。
デジョネットによる Tony Williams「LIFETIME」へのオマージュという企画ライブ。
ライフタイムのレパートリーに加えて、トニー・ウィリアムスが在籍していた時代のマイルスのバンドのレパートリーも演奏されている。
ここで聴けるデジョネットのドラムは、当方がデジョネットに期待する理想のスタイル。
これが正真正銘、正しい Jazz のドライブ感だぜ、という怒濤のグルーブを叩き出す。
過去に何回か書いた事があるが、当方がデジョネットを敬愛するのは、Tony Williams のエモーションに加え、音楽に対する深いインテリジェンスが共存しているから。
パワーと繊細さの絶妙なバランス感覚は、デジョネットの独壇場。


最近はオルガンと言えば Joey DeFrancesco という雰囲気もあるが、 やはり Larry Goldings のオルガンも素晴らしいんだな、これが。
ジョンスコのギターもかなり熱い演奏。
かなり切れまくっていて、「あのジョンスコが帰ってきた!」という感じだ。
デジョネットのクリエイティブなドラミングに、ジョンスコのウネるラインが絡み付き、ゴールディングスの左手がボトムを支える圧倒的な疾走感。
これ、たまりません。

このアルバムがリリースされた当時、たまたま聞いた FM 番組で、小曽根真がこのアルバムに収録されている「Seven Steps to Heaven」を、13分そのまま放送していたのに驚いた。
その気持ちは判る。
とにかく中途半端で終われないほど熱くガッツがある演奏なのだ。
それでいて、このライブ・アルバム全体を支配するムードは、単なるドンチャン大会に終始せず、かなりシリアス。
時たま本気の Jazz を聴きたくなる時に、このアルバムは丁度良い重さを持っている。
継続する緊張感が苦痛にならず、醍醐味として楽しめる希有な作品に仕上がっているわけね。
ECM からリリースされていることを疑うような、しっかりとした Jazz が聴けます。


さすがに Trio Beyond の動画は見つからなかったが、Five Peace Band の動画はかろうじて見つけた。
画質も音質もカメラワークも劣悪だが、参考までに貼っておく。

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おまけに、前述したJohn McLaughlin の1992年のアルバム「Que Alegria」リリース当時のステージを追加しておく。
インドの奇才 Trilok Gurtu と ジプシーの血を引くイタリア人ベーシスト Dominique Di Piazza による独特のリズムが今でも新鮮だ。
マクラフリンのギターの特性が顕著に現れている演奏だが、クラシック・ギター(途中から薄くシンセが被るので MIDI 付きなのが分かるが)で奏でられるとけっこう許せる。

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