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超絶テクニカル・メタル・フュージョン : TRI-Offensive

当たり前の事実だが、世の中には驚くほどギターが上手い奴がいるってことだな。
溜息。

TRI-Offensive というバンドのデビュー作。
2009年6月リリースの新譜。
国内バンドとしては久しぶりに面白いものを聞かせてもらいました。
野呂一生が舌を巻いたという新人ギタリストを、野獣王国やプリズムで活躍する変態プレイヤー2名がサポートした超絶3人組。
これでもかという怒涛のテクニック、狙って作りましたという複雑な楽曲、ここまでやらなくてもという変拍子の圧倒的なスピード感。
ある意味、明快なコンセプトだ。

TRI-OFFENSIVE


ギタリストにアピールするツボもキッチリ押さえている。
流れるような速弾き、鉄壁のリズム感、フレーズとして違和感無く聴かせるタッピング、レンジの広いスイープ。
ロック的高揚感と知的なフレージング。
菰口雄矢、若干21歳、このギタリスト、とにかく上手い。
ここまで弾かれると、気分爽快だ。


国内ギタリストの若手のホープと言えば、「小沼ようすけ」だったことは周知の事実。
彼が中堅としての立場に移行してから久しく大型新人の噂は聞かなかった。


そこに彗星のように現れたのが、この TRI-Offensive の菰口雄矢(Yuya Komoguchi)だ。
小沼ようすけとは全く異質のギタープレイでありながら、端々に幅広い音楽性を垣間見せる部分は共通した資質か。


当方、小沼ようすけのギターは好きなのだ。
ギブソン・ジャズギター・コンテストで優勝した世界に通用する技術力と Jazz から Rock や Pops までカバーする幅広い音楽性。
トレンディドラマ(古い形容で申し訳ないが)で主役をハっても問題無いだろう爽やかなルックス。
名実ともに日本の誇るトップ・ギタリストであることは間違いない。

Yousuke Onuma


何よりも、彼のギターには、彼でしか出せない「味」があるのだ。
どことなく漂う懐かしさ、過ぎた時代の匂い、壊れた夢のかけらの煌めき、小沼ようすけのギターにはそんな「切なさ」を感じてしまう。
若手でもそれなりに上手いギタリストは掃いて捨てるほどいるだろうが、表現者としてのギタリストとして見た場合、小沼ようすけは抜きん出ていると感じる。
30年前の逗子や葉山あたり、夏も終わろうとしている8月末の海岸通り、午後4時の日差しのけだるさと夕闇への淡い期待。
セピア色の海風にのってどこからか香るコパトーンの匂い。
小沼ようすけの奏でるギター・サウンドは、そんな光景すら浮かびあげてくれる。


小沼ようすけに対して、菰口雄矢は、SFチックな近未来的なイメージか。
しかも、それが硬質なサイボーグ的印象ではなく、あくまでも人間的な柔軟性を併せ持つのが特筆。
けっして速いだけとか、必殺技だけでは無いのだ。
菰口氏のギターは、それを一聴しただけで、単なるスポーツ大会に終わらない幅と深さを感じる。
つまり菰口雄矢というギタリストの「可能性」を感じるのだ。
ちゃんとした大人に育ったら、この人、すげえことになるかもしれない、っていう可能性。

Yuya Komoguchi

 

この TRI-Offensive、似たようなバンドということであれば、Steve Smith 率いる超絶フュージョングループ「Vital Tech Tone」や「GHS」が挙げられる。
どちらも、超絶技巧乱れ打ちのギタートリオ。
なんせ、ベースが Victor Wooten やら Stuart Hamm だし。
ギターは Scott Henderson や Frank Gambale だし。
全てがミラクルな必殺技博覧会的な音楽。
ギタートリオという制約が多いフォーマットで、聞く者を飽きさせずに引っ張ろうとすると、やはりこの方向にならざるを得ないというのも分からなくはない。
できるなら、自分的にもこっち方面を指向してみたいのだが、技術的に不可能であることは明白。

TRI-Offensive の音楽は、Vital Tech Tone や GHS の雰囲気と非常に近いところから発信されている。
ただ、その中国雑技団的超絶技巧の嵐の中に時折のぞく、日本的な哀愁のメロディと、たたみ込むような場面展開は十分な個性だ。
そして、菰口氏の羨望の若さと今時のイケメン・ルックス。
これは、日本のインストバンドとしてはけっこう売れそうな予感。
色々な意味で、30年以上前に「Casiopea」が出現した時の衝撃のような波動を感じる。


とにかく、このアルバム、ギターもベースもドラムもかなり笑えます。
Sence Of Wonder やプリズムの知的アスリート岡田治郎(Bass)、野獣王国や KENSO のプログレ変拍子ドラマー小森啓資(Drums)、そして新人類 菰口雄矢(Guitar)。
音楽的意義を語るには時期が早すぎるだろうが、「インスト界に革命を起こす」という野望は、このファースト・アルバムで意外とあっさり達成されるかもしれない。
あまりにも大上段に構えてしまうと往々にして気合が空回りするケースが多いのだが、このアルバムは全11曲息をつく暇も無い程に絶妙の緊張感を維持する。
つーか、これだけの内容でありながら、そんなに大上段に構えているという重さや息苦しさを感じられないのが驚き。
あっけらかんと、普通にやっているという印象で、それが嫌みにも感じられず逆に好感度が高い。
聞く側も難しく考えないで美味しく堪能できます。


もし貴方が Jazz や Rock の世界で何らかの楽器を演奏する人であれば、騙されたと思って一度聞いてみる事を勧めます。
好き嫌いは別にしても、知っておいて損は無いアルバムかと。

まだこのグループでのライブ自体が少なく TRI-Offensive の動画はネット上でも見当たらないが、菰口氏の My Space のページでは、彼の演奏の一部を見る事ができる。

そう言えば YouTube には Pat Metheny の Bright Size Life とかを演っている動画もあったけどなあ。

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コメント

CDもライブも変わらず絶頂ってのが凄いよね^^
個人的には、4曲目のレベレーション イン ア ドリームも男の哀愁?切なさ?を感じて好きかも。1曲だけバラッドってイイよね。
もっと泣きのギターだと尚更イイね。

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