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ルーツ的なもの その9  George Benson [ Breezin' ]

George Benson [Breezin']
Audio CD
Original Release Date: 1976
Number of Discs: 1
Label: Warner Bros.


Breezin'


まあね、このアルバムについては説明不要かもしれない.
音楽シーンのトレンドが大きく動いた時期に一世を風靡し、Jazz / Fusion だけでなく Black Contemporary や Soul Music、そして Pops にも多大な影響を与えたヒット作。
間違いなく歴史を変えたアルバムであり、1976年のグラミー受賞作。
これ、聞いたよなあ。

Wes Montgomery 直系の正統派ジャズ・ギタリストとして誰もが認める第一人者であり、確固たる地位を築いていた George Benson の、軽やかな転身。
明らかに伝統的な Jazz の形式から離れ、スムース&メロウなフュージョン・サウンドの上で、ベンソンのギターが歌いまくる。
このアルバムのリリースによって、ほとんど一夜にして Geroge Benson は 単なるジャズ・ギタリスト では無く、世界的なアーティストとして認知された。

1976年に CTI から Warner Bros. に移籍し、Warner としても社運をかけた作品だった。
プロデューサーは Tommy LiPuma、エンジニアは Al Schmitt。
この黄金コンビの伝説も、このアルバムから始まったと言って過言では無いだろう。
この2人に、Claus Ogerman のストリングスとくれば、Diana Krall 等の例を見るまでもなく、いまだにワーナーが勝負に出るときのスペシャル・チームなわけで。


とにかく George Benson は上手いから。
それも、果てしなく上手いわけで、ただその一点だけでも認めざるを得ない。
あれだけ自由にギターが弾けたら、さぞや楽しいだろうなあ、っていう羨望の対象。
たぶん、頭に浮かぶフレーズは全て瞬時に弾ける。
ベンソンのプレイ・スタイルは、Blues をルーツに持ち BeBop によって発展した Charlie Christian Style の究極の完成形と言っても良い。
今や、それは George Benson Style と同義。
その豊富なジャズ語彙とフレージングの極上のセンスは、全てのギタリスト達の脳幹を直撃するだけでなく、老若男女、誰が聞いても「カッコ良い」という普遍性を持つ。
シビれちゃうわけよ、とにかく。
そしてそのフレージングを支える圧倒的なテクニックは、ただただ感心するのみ。

この「Breezin'」というアルバムも、実はギター弾きにとって恐るべき内容。
華麗なストリングス、耳当たりの良いハーモニー、心地よいグルーブ、ポップなメロディ、とにかくアルバム全編にわたって極上のスムースさなので、ともすれば軽く聞き流せてしまうような第一印象を受ける。
しかし、ことギター・プレイに焦点を当てて聴き込むと事態は一変する。
このアルバムの George Benson は、実は凄すぎることを平然とやっているのだ。
それなりにギターが弾ける人間が聴けば聴くほど、そのアンビリーバボーな技巧とジャズ・ギターの新境地に叫び声すら出るだろう。
1曲めのタイトル・チューンくらいまではなんとか平静を保てるが、そこから先は異次元の境地。
4曲目の「Affirmation」のソロなんか、マジに失神できる。


この翌年にハリウッドの Roxy で行われたライブを2枚組の LP にまとめ1978年にリリースされた「Weekend in LA」は、正に圧巻。
「Breezin'」の世界観の中で、絶頂を極めたギタリストとして、溌剌としたボーカリストとして、自身が切り開いた新境地で水を得た魚のように奔放に表現するベンソンを聞く事ができる。
明らかに油の乗り切っている状態だ。


Weekend in LA'



ギターも弾けるボーカリストとか、トップ・クラスのエンターティナーという認知のほうが大きくなっている昨今では、George Benson のギタリストとしての力量を理解している人は少ないのかもしれない。
実際、最近のアルバムでは、ギターとかあんまり弾いて無いし。
だけどね、とにかく George Benson はギターが上手いのだ。
そして、その技巧を技巧として聞かせるのではなく、あくまでもエモーションを具現化する為の必然としての技巧がある。
当方にとって、この「Breezin'」というアルバムは、自らが「技巧を身に付ける」事の根拠であり言い訳なのだ。
自由に歌いたければ、自由に歌えなければならない。
その為には、技巧は必然だ。
そういう論理が証明できるアルバムなわけ。
私には100年かかっても無理だけど。


George Benson'


そして、この「Breezin'」の素晴らしさは、George Benson のギターだけではない。
とにかく、ヨダレが出るほど気持ち良すぎる、絶妙のグルーブ感。
このリズム・フィーリングだけで、Contemporary Jazz とか Fusion という新しい音楽の姿が明確になった。
都会的な洗練を持ちながら、本能的なエモーションも内包する。
スマートでありながら、漂う情熱。
これは鳥肌もん。


Harvey Mason (Drums)
Stanley Banks (Bass)
Jorge Dalto (Key)
Ronnie Foster (Key)
Phil Upchurch (Guitar)
Ralph Macdonald (Percussion)
Claus Ogerman (Strings Arrange)

この時期に、このメンツだから生まれた音世界だ。
Hervey Mason の「そこそこ!」と思わず声が出てしまう熟練のマッサージ師のようにツボに入るドラミングが、Stanley Banks のヒップでイナたいベースと絡み、Ralph Macdonald のパーカッションが絶妙のアクセントを添えれば、そこにバラ色の桃源郷が現れるのだ。
そして、Jorge Dalto の哀愁のピアノ!
Phil Upchurch のファンキーなリズム・ギター!
天上から降り注ぐ清らかな光となって全てを包み込む Craus Ogerman のストリングスの輝き!
それだけでも、時代を変えられただろう新しいフィーリングに充ち溢れたバック・サウンド。
もうね、私なんぞ、これだけで合法的な恍惚状態。


この「Breezin'」というアルバムは、マーケッティング、企画、プロデュースやエンジニアリング、選曲、編曲、演奏、全てが高次元で奇跡的に融合し、壮大なプロジェクトとして類い稀な完成度を誇る作品。
70年代の名盤を選ぶなら、ジャンルを超えて必ず入るべきアルバム。


もちろん、今となってはこれを知らない世代が出てきているんだろうなあ。
だけどこれは聞いておくべきだよ。
個人的にもそうだけど、今の時代の音楽の「ルーツ的なもの」であることは間違いないからね。
せめて、メタボなオヤジ歌手が妙にギターも上手い、って認識は改めようよ。

Ibanez GB-10'

そう言えば、TFN のベーシストも、何を勘違いしたのか Ibanez の George Benson Model を所有していた時期があった。
私は買えなかったけどね。
金額はともかく、あれ買っても、ベンソンみたいに弾けないし。
あれだけ有名なモデルだと、誰が考えてもベンソンみたいに弾くしかないギターなわけで。


では、動画でも。

「Breezin'」に収録された珠玉の6曲の中から2曲。
先ずは、この1曲だけで George Benson が一流のボーカリストとして認められた「This Masquerade」。
比較的近年のステージの映像。
けっこうメタボ入ってます。

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そして「Breezin'」で歴史に残る名演を残した「Affirmation」。
ベンソンが若いし、バックのメンツから推測して「Breezin'」リリース当時のステージと思われる。
盲目のシンガー・ソングライター、ホセ・フェリシアーノ作のこの曲は、「Breezin'」でカバーされた事で、今やJazz / Fusion の世界ではスタンダードだ。

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