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エレガット用周辺機器のレビュー <その2:Guitar Synthsizer>

エレガット用の周辺機材を準備したので、とりあえずレビューなど。
若干は一般的な音楽機材情報としての補足説明も盛り込んだのだが、逆に内容が冗長になってしまった感は否めない。
よって、エントリーを 2つ に分けてあります。
興味のある人だけどうぞ。


Roland GR-20 Box


◆ ギター・シンセサイザー

Godin の SA シリーズ を導入した以上は Roland GR-20 を入手するのは自然の流れ。


Roland GR-20


てか、今、手軽に導入できるギターシンセって、これしか無い。
マーケット自体がかなり小さいので、楽器メーカーがこの市場に製品を投入するのは採算的に微妙なんだと思う。
ま、Roland にしても GR-300 からのギターシンセの老舗としての意地があるから、なんとかその歴史を継続しているだけだと思われる。

だって、この GR-20 もシンセとしては時代遅れ感が漂うチープな PCM シンセ。
出音は SC-55 とかの 20年前の DTM 用 シンセといった印象だ。
普通のシンセサイザーだったら、今更こんなもん誰も買わないというレベル。
ギタリストがエフェクタ感覚で使うというコンセプト故に、シンセとしての先進性やシンセ本来の機能をほとんど削ぎ落としてしまった中途半端な製品。

もちろん音色のエディットはほとん出来ない。
まあ、アタック・タイムとかリリース・タイムを調整したり、簡易的なエフェクトの掛かり具合を変えたりはできるが、音色の基本となる部分にはアクセスすらできない。
Roland の GK ピックアップの仕様に合わせて、ベンドレンジも24で固定。
まあ、シンセとしてはオモチャですわ。


現在の Roland の採用しているギターシンセは、弦振動からピッチやダイナミクス、エンベロープといった情報を検出して MIDI (又はそれに準拠した演奏情報)に変換し、その演奏情報によってシンセサイザーを発音させるという仕組み。
つまり、ギターの音をアナログ的に直接加工しないで、そこから別のデジタル・データを作りだす。
このコンセプトのギターシンセが、現時点で一つの楽器として音楽表現に使えるかというと、現実的には大いに無理があると言わざるを得ない。

このタイプのギターシンセの最大の問題点は、ピッチ検出に物理的にタイムラグが付いてまわること。
どんなに高速の検出アルゴリズムであっても、周波数の振幅の1周期が終わらないことにはピッチは特定できないわけだから。
しかも実際のギターのサウンドはサイン波じゃないわけで、波形の周期性を検出して基音を導き、そこからピッチを割り出すには、かなりの周期の波形を抽出しなければならない。
だから、現状の設計コンセプトではタイムラグは絶対に無くならない。
しかも、周波数の1周期が長くなる低音方向ほど顕著。
たまに検出エラーも発生し、「そんな音弾いてねえぞ!」と憤慨することもある。

まあ、若干のタイムラグ程度なら、実際のステージでのアンプとの距離程度の問題だから、演奏に支障をきたすことは無い。
しかし、ギターの演奏表現には、スライドやハンマリング、チョーキングとか、もちろんビブラートとか様々な技巧が駆使されるわけで、これらを解析するにも不安定なピッチ検出の仕組みで行われるしかない。
こうなると、その不安定さを前提として、かなり気を使った演奏を心掛けないと、正しい発音がされないのだ。
また、弦振動がどこまで減衰したら音を止めるのかとか、デジタル技術的に様々な縛りが発生しちゃうわけで、少なくとも現時点では楽器として成り立たないと断言できる。
それに、ギターって楽器は、もともとが不完全な楽器なんだよね。
ピッチだって絶対に正確じゃないし当然和音は濁るし、そういう揺らぎを再現するのか、それとも無視するのかという部分で、今のギターシンセのコンセプトは中途半端すぎる気がする。


加えて、ピッチの問題以外にも、例えばハーフミュートやゴースト・ノートと言ったギター固有の演奏方法をどのように扱うかとか、デジタル・ギターシンセの課題は山積みなのだ。

もちろん、過去には様々な技術を使用してデジタル・ギターシンセ固有の問題を乗り越えようとした製品は存在する。
例えば何を隠そう当方も所有していた過去があるが、1980年代にヤマハが発売した MIDI ギター「G-10」は、ピッチ検出のタイムラグを無くすために、超音波を各弦に常時流しておいて、その反射で弦のどこの位置に指が当たっているかを読み取りピッチを決めていた。
チョーキングやビブラートには、弦の歪みを検知する固有のセンサーを装備していた。
これらのセンシング・データと、実際に弦がどのくらいの強さで弾かれたかのトリガー・データを組み合わせて、瞬時にデジタル・データを生成する。
そのデータを専用のコンバーター( G10-C )によって、MIDI データに変換するという、けっこう大げさなシステムだった。
まあ、純粋に学術研究的なテクノロジーを用いれば、いろんな事ができちゃったわけで。


YAMAHA G10

ただね、こうなると、もはやギターでは無く、単なるインターフェイスだ。
使用する弦も6本とも同じプレーン弦を使用するし、極論としては別にギターの弦でなくても良いのだし、当然チューニングも不要だし、ギターとして音は出ないわけよ。
演奏のフィーリングもギターとは別モノ。
これでは、ギタリストから見たら、全く魅力が無い。
そもそも、単なるインターフェイスとしては、キーボードのほうが遥かに優れているし、オペレーションも簡単。
ヤマハは、そこの部分の判断を間違ったわけ。
こんなもん、ギタリストが弾きたいとは思わない。

その他にも、いろんなアイデアでギター型のインターフェイスが考案されてきたが、結局はギター的な演奏ができない、という部分で淘汰されてしまった。
例えば、Allan Holdsworth や Lee Ritenour の使用で脚光をあびた「Synthaxe」だって、最近ではほとんど見かけることは無い。


Synthaxe


今、コンシュマー市場に生き残っているのは、多くの矛盾をかかえながらも、あくまでもギターとしての演奏感覚が残ったモノにすぎない。
それらはどちらかというとギターとしての機能や演奏性を前提としているわけで、純粋にシンセサイザーであろうとする製品は、存在していないと言えよう。


だから、現在のギターシンセは、あくまでもギターそのものの演奏の色付けという役割がメインで使用される。
例えば、ギターのアルペジオにシンセのパッドが薄く重なるとか、ギターのメロディにブラスが微かにユニゾンするとか。
つまり、決してギターシンセがメインに出る事は無い。
これであれば、GR-20 のチープなシンセ機能であっても、まあまあ使えない事はないだろう。
というか、そういう考え方をしないと、現時点のコンシュマー・レベルのギターシンセはほとんど使えないから。

GR-20 は、その意味で、ギターシンセというよりは、ギターの音に若干の装飾をほどこすエフェクタ的なスタンスと考える事ができる。
そう考えれば、シンセとしての機能をバッサリ切り捨てたコンセプトも納得できる。
既存のギターをそのまま使って専用ピックアップを付けるだけだから、当然ギターとしての演奏性は完璧に確保されているわけだし。


もちろん、Pat Metheny のようにアナログ時代の GR-300 を弾き続けるという選択肢はあるが、あれはあれで現代の音楽シーンでギターシンセと言うにはあまりにも自由度が無さ過ぎるし、メセニーにしてもシンセとしてではなく一つの楽器・楽音としてのアイデンティティを認めているのだと思われる。


GR-20 を発音させるには ギターの各弦毎の演奏情報を独立で抽出する GK-3 という専用のピックアップが必要。


Roland GK-3 Pickup

もちろん、このピックアップも GR-20 に同梱されてはいるが、Godin の SA シリーズには、この規格の信号を出力する専用ピックアップが標準で装備されている。
各弦独立のサドルがそのままピックアップとなっているので、この部分のレスポンスは最速かもしれない。


Godin Multiac SA Pickup


確かに、その昔に当方がギターシンセを弾いていた時から考えると、けっこうな早弾きにも追従するし、エラーも少なくなっていて感心した。
GR-20 でピアノを弾こうとは思わないが、浮遊感のあるストリングスをギター・サウンドの味付けにするくらいは十分にできそうである。
ま、その程度のニーズに対して、実売価格 5万円ってのは、ギリギリ許せる範囲だった事もあるし。
昔のギターシンセの価格から考えたら、恐ろしいほど安くなったものである。

とりあえず GK-3 が残ったので、そのうちに手持ちの改造ストラトに取り付けようと計画している。

でも、これって、結局はすぐに飽きるんだろうなあ。
そういえば、思い起こせば当方のギターシンセ遍歴もそれなりの汚点を残してきた。
一時は、あの CASIO がどういう会社方針の混乱があったか知らないが、唐突に発売しちゃった MIDI ギターまで手に入れて、「それ計算機としても使えるの?」と馬鹿にされた事もあったっけ。





ではオマケとして、ギターシンセの動画でも。

最近では Roland の広告塔のようになっちゃってる Robert Marcello が GR-20 を紹介する動画。
そして、Allan Holdsworth が Synthaxe にハマっていた1986年に行われた Frankfurt でのライブ。
曲は Non Brewed Condiment、ドラムは Gary Husband、ベースは Jimmy Johnson、キーボードはケイ赤城だ。

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