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エレガット用周辺機材のレビュー <その1:Amp & Effector>

エレガット用の周辺機材を準備したので、とりあえずレビューなど。
若干は一般的な音楽機材情報としての補足説明も盛り込んだのだが、逆に内容が冗長になってしまった感は否めない。
よって、エントリーを 2つ に分けてあります。
興味のある人だけどうぞ。

Fishman Spectrum DI

◆ ギターアンプ

Roland AC-90 を入手。

Roland AC-90


エレキギター用のギターアンプは、一般的なオーディオ・アンプと比較すると、非常にクセのある設定になっているのは周知の事実。
あくまでもエレキギターのトーンを中心に作られているわけで、一般的なオーディオ・システムとして使用する事は考えられていないわけね。
その昔にレオ・フェンダーによって(シングルコイル用のエレキギター用に)設計されたコンセプトを踏襲し、一般的にはミッドが沈んで低域と高域を強調する設定になっていて、しかも敢えて歪みやすい回路でできている。
つまり、エレキギター用のギターアンプというのは、ギターの音を素直に聞かせるのが目的ではなく、積極的な音作りの重要な要素なのだ。
「エレキギターはアンプも含めてひとつの楽器だ」と言われる所以。
だから、CD 等をギターアンプで再生した場合は、聞くに堪えない音になってしまうわけ。


ところが、ナイロン弦でもスティール弦でも、とにかくアコースティック・ギター用のアンプの場合は、どちらかというとオーディオ・アンプに近いフラットな特性が求められる。
だって、エレキギターと違い、アコギの本来の生音に何も色づけせず、そのまま聞かせる事が究極のニーズなのだから。
もちろん歪みは許されないし。
つまり、ことアコギにおいては、アンプでの音作りという発想は無いわけね。
エレキギターとアコギでは、ギターアンプに対する根本的な考え方が異なっているのだ。
そんな事もあって、通常はアコギをギターアンプで再生するケースは少なかった。
例えばレコーディング等は生鳴りをマイクで拾うし、ライブ・ステージでは DI を通して PA に直接送ることになる。


しかし近年になってアコギの演奏表現が多様性を持つようになり、そのフィールドが飛躍的に広がったことで、やむなくギターアンプを使わなくてはならない局面も多くなった。
この状況を受けて、いくつかのアコギ専用アンプがリリースされた。
代表的なのは、ドイツ AER 社の「Bingo」。


AER BINGO 2


これはアコギの世界ではクラシック・プレイヤーから Pat Metheny まで、誰もが使っているド定番のアンプ。
最近では L.R. Baggs 社の「AR-1」等も有名。


LR Baggs AR-1


いずれにしても、オーディオ的にピュアに設計されていて、CD やマイク等を入力しても素直に再生できるようになっている。

国内では Roland 社が 2003年に「AC-60」という機種をリリースし、ボーカル・アンプとしても十分の使えてしまうクリアな音質と、リサーチを重ねたと思われる使い勝手の良さで、一気にベストセラーに躍り出た。
小規模ライブやストリート・イベントを中心に「AC-60」は絶大な評価を得たのだが、もう少しパワーに余裕が欲しいといった現場のニーズに答える形で発売されたのが 90W タイプの「AC-90」。
よって、ほぼ「AC-60」同等の機能性だが、スピーカーはツイーターが追加されて更に音像が鮮明になったとの評判。

ギターとマイク(ラインにも対応)の独立2チャンネル仕様で、マイク入力はファンタム電源も供給できる。
AUX 入力が装備されていて CD や MD から SE も流せるし、DI アウトから PA にダイレクト出力しつつ、ステージ・モニターとしても使える。
加えてヘッドフォン出力やサブ・ウーファー出力端子も付いている。
リバーブとコーラスも各チャンネル個別に設定でき、コーラスは JC 譲りのクオリティ。
アコギのフィードバック対策としてアンチ・フィードバック機能も内蔵。
ここまでくると、アコギ用のアンプというより、簡易 PA システムですわ。
規模にもよるが、ギターとボーカルのデュオとか、弾き語りとかの PA ならこれだけで完結できる便利モノ。

音質が素直なのは当然として、とにかく小さく軽いのが嬉しい。
加えて、ステージ・モニタとしての利便性を考慮して本体を傾斜させるスタンドが付いていたりと、細かい部分で気が利いている。

Roland AC-90 Case

なんと言っても、標準で付属するこのケースが素晴らしい。
電源コードを収納するポケットも付いているし、各部にすっごく細かい気配りがされている。
まあ、本体が 10Kg もあるので、このケースに入れても気楽に運べるという訳でないが、それでも普通のエレキギター用の真空管アンプに比べたら遥かに取り回しが楽だ。

最近では、BOSS GT-10 のようなアンプ・シミュレーターを搭載したマルチ・エフェクターの出力を繋ぎ、「AC-90」をエレキギター用に使うという手法も可能だと言われている。
確かに、アンプ・シミュレーターから PA に直接送るのと同じと考えれば、その用途もありか。
そう考えると、独立2チャンネル入力というのも、けっこう便利に使えそうだ。
ただ、こればっかりは、実際にやってみないと分からないけどねえ。
エレキギターのトーンってやつには、わけのわからん価値観があって、理論的に割り切れない部分の方が多いからね。
そのうち試してみますわ。



◆ エフェクタ

エレガット用のエフェクタとしては、まあ、ギター本来の音をスポイルしないような微妙な色づけ程度のモノが基本だろう。
その意味ではリバーブ程度で十分だし、ほとんどの場合はリバーブはコンソールでかけてもらうほうが良い結果になるのも事実。
レコーディングの場合は、録音時には細工をせず、ミックス段階でエフェクト処理をするのが一般的。
てなわけで、「アコギをプレイする場合はエフェクター無し」ってのも潔いのだが、自分的にはそれじゃ面白くない。
レコーディングは別として、とりあえずライブくらいは他人に任せないで自分でコントロールできる部分を確保しておきたいってのも自然な欲求だと思う。


で、エレガットに施されることが多い一般的なエフェクトを準備しようかと。
コーラス、デレイ、リバーブあたりに加えて、私的にはコンプも欲しい。
クラシック・ギター奏者じゃないんで悪しからず。
もちろん、それぞれ妙なクセがあるものは避けたい。
アナログに拘る事も無いし、逆にデジタルのフラットさと正確さが望ましいかもしれない。

で、こんなんなりました。


Effector Bord for Nylon Strings Guitar


・TC Electronic Nova Dynamic
・Fishman Spectrum D.I.
・Ernieball Volume Padal VP Junior 25K
・BOSS Super Chorus CH-1
・BOSS Digital Delay DD-7
・BOSS Digital Reverb RV-5

ここから直接 PA に送るのではなく、あくまでギターアンプ(AC-90)に送ることを前提としているセッティング。
PA に送る場合は、 AC-90 の D.I.アウトから送るつもり。
歪み系が無いだけで、エフェクタってかなりスッキリしちゃうもんだね。


BOSS の 3機種は、ま、無色透明で無難という選択。
悪名高い「BOSSバッファ」も、プリアンプ内蔵のエレガットの場合そもそもがロー・インピーダンスの信号だし、Fishman のプリアンプもかましているので無視できるかと。
エレガットでの音痩せと言っても、バンドの中では痩せて丁度良いかもしれないとも思うし。


ただ、コンプだけは、所謂そのへんのコンパクト・エフェクター・レベルでは明らかに不自然になる。
これは機器のクオリティの問題と言うよりは、方向性の相違。
エレキギター用のペダル・タイプのコンプは、レコーディングに使われるコンプとは価値観が異なり、独特のアタック感とか、サスティーンを延ばすだとかのほうに重心がある。
ところが、アコギの場合は、どちらかというとレコーディングやミックスで使うようなコンプ本来の効果が求められるわけ。
TC Electronic 社の「Nano Dynamics」は、当方が知る限り、スタジオ・クオリティのコンプレッサーをペダル・タイプで実現する唯一の製品。

TC Electronic Nova Dynamics


「Stomp モード」と「Studioモード」が選択でき、「Stomp モード」の方は、所謂エレキギター用のペダル・コンプという効き方をする。
これもけっこう滑らかなコンプで素晴らしいのだが、「Studio モード」は、まんまスタジオ・クオリティのマルチバンド・コンプなのだ。
しかも、スタジオ機器では定評のある TC Electronic の名に恥じないクオリティなのだ。
当然だが、アタックやスレッショルド、レシオといったコンプの基本パラメーターが、その通りに作用する。
しかもマルチバンド処理なので、特にエレガットのようにミッドローが膨らんだトーンでも、あくまで自然なコンプ感が得られるのには感動した。
何ていうか、いろいろと扱いが難しそうなエレガットの音が、ステージ上で使い勝手の良いサウンドになるのだ。
ゲイン・リダクション量が LED メータでリアルタイムに確認できるのも、我々が普通にスタジオ使うコンプと同じ感覚で使えて違和感が無い。
これ、素晴らしいコンプです。
しかも2チャンネルをパラでもシリーズでも独立して使用できるので、例えば指弾きとピック弾きの音量バランスを取るとか、アイデア次第では色々な目的に柔軟に使えるところも嬉しい。


前述したようにアコギ本来のサウンドを収録するには、生音をマイクで拾うのが普通だった。
しかも繊細な響きまでとらえられる、高性能なコンデンサー・マイク系が推奨されてきた事は周知の事実。
しかしながら、レコーディングや弾き語りはともかく、ドラムが入る様なバンド形式のライブでコンデンサー・マイクでアコギを狙うのは、ハウリングの問題でほぼ不可能。
そこで、ライブ等ではエレアコを使用し、ギターに内蔵されたピエゾ・ピックアップから D.I. を介し直接PAに送るのが一般的。
ただ、この場合は、ピエゾが直接的に弦の振動を拾うので、アコギの持つ「胴鳴り」とか、マイク収録の空気感とかが欠落する。
所謂「ピエゾくさい」音になるわけね。
オベーションの例もあるしそれはそれで悪くは無いのだが、アコギに拘りがあるプレイヤーからすると、どんなに素晴らしい生音のギターでも、すべからずピエゾ・サウンドになってしまうのが許せないわけね。
で、ピエゾピックアップによって欠落した要素を補う機能が D.I. の付加価値として内蔵されるようになった。
ピエゾ出力でもギター本来のサウンドに近づけられる D.I. ってわけ。
そして、その新しいトレンドは、アコギの美味しい帯域に効くような EQ やコーラスに加え、ボディの共鳴をデジタル処理で付加したり、モデリング技術によってサウンドそのものを作りだしたりする機能など、DIというよりアコギに特化したひとつのエフェクターとして進化してきた。

今回当方のペダルボードに搭載した「Fishman Spectrum D.I.」は、そのトレンドの結実だろう。


Fishman Spectrum DI

これ、基本的にはアコギに最適化された EQ とコンプを装備したプリアンプ/D.I.なんだけど、実は Fishman 社が開発したの「Auraテクノロジー」の集大成とも言える機種なのだ。


「Auraテクノロジー」とはピックアップで拾われたアコースティック・ギターのサウンドをマイクで収音されたサウンドに変換する技術。
メーカーの説明文は次の通り。

「アコースティック・ギターのサウンドは、弦の振動/トップ板の振動や共鳴/様々な方向への音の拡散等 様々な要素から構成されており、そのサウンドの収音には本来のサウンドの方向性であるギター正面からのマイクでの収音が大変有効です。
しかし、ライブ環境において様々な特性を持ったマイクの中から使用するマイクを選択し、ギターとの距離や角度を的確にセッティングし収音することは大変困難な作業です。 
そこで FISHMAN 社は、アンダーサドルやコンタクト型等 これまで様々な P.U.を開発してきました。
P.U.によるギター信号の増幅は、音量の面で大変有利だけでなく他の楽器の回りこみが無く、ギター信号を完全にアイソレートして増幅/加工ができるという利点があります。
そこで、ギターのサウンドが本来空気振動によるものという観点から、FISHMAN 社では P.U.信号によりマイク収音のサウンドを再現できる製品の開発に取り掛かり、AKAI Professional の技術提携を経て5年の歳月を費やし『Aura ~Acoustic Imaging Blender~』を完成させました。
Aura により、サウンドにギター本来の鳴り/自然な空気感と立体的な広がりを再現することが可能です。」


要はピエゾ・ピックアップ等のサウンドに空気感と立体感を与え、楽器自体のボディー鳴りも再現することができる技術。
もともと、この技術を使った製品は「Aura Imaging Blender」として、使用するギターのタイプに合わせていくつかの製品が発売されていた。
ドレッドノート用、ナイロンギター用、ジャンボタイプ用、オーケストラ用、等々。
これらのタイプ別に、Neumann や AKG、Shure といった16種類のマイクで収録した響きが再現でちゃうっていう画期的な製品だった。
「Spectrum D.I.」は従来タイプ別に販売されていた「Aura Imaging Blender」を全て内蔵しちゃった、お買い得感に溢れた最新モデルなのだ。

この「Aura Image」というテクノロジーについては、当方はギターのボディの響きのインパルスをサンプリングしてコンボリューション・リバーブのような固有の残響を生成させているのかと推測していた。
ところが、ちょっと調べてみたら、実際の仕組みは違うようだ。
ギターのタイプ毎にピックアップ収録とマイク収録との時間的差異と周波数的差異を抽出して、20Hz~20KHzまでの周波数帯で2,000箇所の補正をかけるという技術らしい。
なんだか力技っぽいのだが、その効果は素晴らしい。
ピエゾの音がコンデンサーマイクで収録した音に変換された、とまでは言わないが、明らかにボディの芳醇な響きと透明な空気感が生まれる。
ライブでの必要性は会場や PA の状況にもよるが、レコーディングでは非常に有効。
ある意味、玄人好みの機材。
まあ、作りの高級感からして、明らかにプロ用ですわ。

昨今のアコギ用のエフェクトでは、「Aura Imaging Blender」と同じような効果をデジタル・モデリング・テクノロジーでシミュレーションするという事が一般的。
それらにしても、、まだまだ選択肢が限られているわけで、例えば「YAMAHA AG-STOMP」はいまだに名機とされていて中古市場でも高値が付くが、ヤマハがエフェクター事業から撤退した今となっては、今更苦労して入手するまでもないだろう。
現行機種では BOSS の「AD-8」っての評判は良い。
後は L.R. Baggs 社とかの海外メーカーから多少は発売されている程度。
Fisiman 社では、それらに対して、次のように優位性を主張している。

「モデリングは、入力した特定のギターの信号を加工し、様々な機種の音色が得られるデバイスです。Auraはモデリングとは全く異なります。
Auraは実際に高級スタジオで収音されたギターから生み出されるサウンド・イメージを『再現』するデバイスなのです。」

よっぽど自信があるんだろうが、確かに Fishman 社と言えば、アコギのピックアップやプリアンプの草分け的なメーカーだからね。


てなわけで、エレガット用のエフェクタはかなりスッキリとまとまったのだが、「Nova Dynamics」といい「Spectrum D.I.」といい、なかなか中身の充実したセッティングになったのが自分的には大きな収穫。
そんな中で、Fishman Spectrum D.I. には、新しい可能性を感じた。


さて、とりあえず形は整ったんだけど、どっかに生ギターとのデュオでカフェ・ライブとかやりたい女性ボーカルいないかなあ?
下心は無いっすよ。




ところで、基本的にめんどくさがり屋の当方としては、マルチ・エフェクタで済ませられるなら、マルチ1台でお茶を濁したいタイプ。
だって、ステージでのセッティングとかは格段に楽だし、複数のエフェクタを繋ぎかえる手間もいらないし、曲に合わせてメモリもできるし。
なので、エレガット用のエフェクタも、初めはマルチ・エフェクタで済まそうと考えた。
ところが、コンプやモジュレーションやデレイ、当然リバーブまで入っているアコギに特化したマルチ・エフェクタって、ほとんど存在すらしていないのよ。
「その用途なら、普通のエレキ用のマルチ・エフェクタでいいじゃないの」という貴方も正解だが、どうしても各社の力が集中するエレキ用のアンプ・モデリングは不要だし、代わりにアコギに特化した前述のようなシミュレーション機能が欲しいじゃないの。
そういうマルチって無いのよ、これが。

唯一、ZOOM から「A2.1u」というのが出ていた(下位機種で A2 ってのもある)。
ZOOM には、過去に何度か泣かされているのだが、仕方なしに入手してみた。


Zoom A2.1u

で、またやられましたわ。
まったくもって使えませんでした。
モデリングによるアコギ・シミュレートの良し悪しは妥協の範疇ではあったが、リバーブはウソ臭いし、何よりもモジュレーションにノイズが入るのは致命的。
だめだこりゃ、というレベル。
騙されたなあ。
ま、個体差で、当方の手元に来たモノがたまたまハズレだっただけかもしれないが、一応、参考までに。
ただ、当方は、もう2度と ZOOM 製品は買わないと固く誓った。




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コメント

もの凄く役に立ちました!!
生楽器って、純粋に音色を損なわず音量を増幅するには、マイクしかなくて…。ソロなら良いですけどね。ハウリングも何もないですから。マイクの質と部屋やインターフェイス等…くらい。
ユニット形式で音量が大きければもうアウト…。。ライブであの生々しさを伝えるには…ピエゾにマイクシュミレーターかまして、小型の高出力アンプ。
ライブで箱の生楽器にはこれしかないんですよね。。
ピーターホワイトさんや、リー・リトナーさんは抜群に上手かったです(生で聞きました)
ピーターさんは、ジャズコに突っ込んでセッティングぢていました(笑)ワウまでかけて。
あの生々しい膨よかな音が、ある程度の編成で可能にするのは大変です(涙)

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